生き方カレッジ2011 ~第4回「地域」~
第4回<地域>
国をつくる地域を創る
2012年01月11日更新
自分らしく働く女性を応援するために、朝日新聞ジョブラボが開催している「生き方カレッジ2011」。今年はFRaUも協力し、女性にとっての新しい「幸せのモノサシ」を探る。第4回のテーマは「地域」。

政治家にリーダー不在 民間が支える被災地
宮城県気仙沼で生まれ育ち、家業の廻船問屋を継いだ斉藤和枝さんを招いたこの日。講演は、彼女の被災体験から始まった。家や車が流される轟音を聞きながら、目の前で何が起こっているか理解できないまま呆然と眺めていた。
「幸いなことに、私たちの会社は全員無事でした。生き残った私は、元気を出すのが仕事だと思って、今日までやってきています」後手に回る国の被災地支援はあてにせず、会社の再建や地元の復興のために奔走する日々だ。「『国の方針が決まってない』という言葉がどこまでも壁になり、何も始められないんです。国の支援は半分あきらめて、自分たちでできることから進めています」世界銀行勤務時代、世界各地の貧困国にホームステイをして現場の実情を探ってきた西水美恵子さん。震災後、自身で足を運び現地を見て回っている彼女の目にも、民間の活躍が留まった。
「3・11以降、民間のリーダーの底力を感じています。政治家=リーダーと思われていますが、それは間違い。本当のリーダーシップとは、本気で世のため人のために引っ張っていくことで、その火種は根本的に誰にでも備わっていますが、権力を持つと消えやすいのです。でも、被災地では、ものすごい体験を共有したことで、リーダーシップの火種に火が点いたのでしょうね」
被災地訪問で改めて地方分権の必要性も感じ取った。
「斉藤さんのように民間が素晴らしい動きを先にしてる後ろを、行政がよっこらよっこら追いかけてる。これは世界共通なんですけども、とくに日本は中央集権型なので、この傾向が強い。本当の地方分権を根付かせないと」
地元で家業を守り、発展させてきた斉藤さんと、元世界銀行副総裁として世界に広がる貧困と向き合ってきた西水さん。活躍の場は違うふたりだが、同じ想いが垣間見えたのは、司会者の一色さんから女性と自由について問題提起があったときだった。
「今は女性の生き方が自由になってきて選べない、自由すぎて大変という、自由の逆説のようなことがあるのでは」というのが一色さんの問いかけだった。
これに対して西水さんは「好きなことをすることが自由ではない」と断じる。「夢、信念、意志さえあれば、本物の自由の選択肢は見えてきます。人間として何がしたいのか。それを見極めることから何かが始まるのでは」
斉藤さんの場合、大学で教職課程をとろうとしたら大反対にあうなど、家業を継ぐという、ある意味選択が許されない環境だったとも言えるが、「今の仕事は天職」と微笑む。
「私は決められた道を歩いてきましたが、歩いていくうちに本気になれるものに出合えると思うんです。必死になればなるほど道は拓けます。その道は螺旋状でなかなか辿りつけないかもしれないけど、ふと気づいたら着いている。最近、そんなふうに感じています」
働く女性の大先輩たちの言葉に、参加者は大きな勇気をもらった。

講演後の交流会は、講演者と直接、会話を交わしたり、名刺交換をできる貴重な場だ。
生き方カレッジ2011年の詳細はジョブラボでもみることができます。
Profile
西水美恵子<Mieko Nishimizu>
元世界銀行副総裁。’70年、米ガウチャー大学卒業。’75年、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程(経済学)を卒業、プリンストン大経済学部(ウッドロー・ウイルソン・スクール兼任)助教授に就任し、教鞭をとる。’80年、世界銀行経済開発研究所に入行。数多くの途上国を担当し、貧困と闘う。’97年、南アジア地域担当副総裁に就任。’03年、退職。’07年よりシンクタンク・ソフィアバンクのパートナーに。著書に『国をつくるという仕事』(英治出版)がある。現在、夫と海外で暮らし、日本には年2回ほど訪れる。
斉藤和枝<Kazue Saito>
気仙沼で続く廻船問屋の長女として育つ。「『家を継ぐんだ』と父親から呪文のように言われ続け」、大学卒業後、3代目として家業を継ぐ。近年、地元で水揚げされた新鮮な魚介類を使った無添加の水産加工品の製造・販売をし、首都圏にも販売網を広げてきたが、東日本大震災で工場と直販店が全壊。民間ファンドで資金を募り、新工場の建設を目指す。工場を間借りして生産再開にこぎつけたさんまの佃煮「金のさんま」が、伊勢丹新宿本店等で販売を再開した。家族は両親と社長である夫、子供3人。






